こころを育む衣服 服育

  • 教材ダウンロード
  • 各種応募申込み
  • お問合せ資料請求
  • 検索
  • 教材ダウンロード
  • 各種応募申込み
  • お問合せ資料請求

服育コラム

VOL.5 【原始布】布帛以前と原始布の原点

原始布は様々な草木から作った布帛

世界的な環境問題に答えるかのような最近の自然回帰の中で、数年前まで殆ど見向きもされなかった原始布が脚光を浴びています。今回はこの原始布について調べて見たいと思います。原始布は古代布あるいは古代織とも呼ばれています。

最近のファッション誌や女性情報誌等ではお洒落感覚で取り上げられた情報が多いようですが、今回は原始布を私たちの祖先が厳しい環境の中で自家用のために様々な草木から作った布帛という側面から見ることに致します。

【布帛以前(繊維の始まり)】

紐から布帛へ

遠い昔、それは縄文・弥生時代、いやそれ以前かもしれません。その時代に生き私たち祖先は、生きるために過酷な天候や自然環境を乗り越えていく中で、火をあるいは道具を使ったのと同じように、自然界にある様々な危険から身体を保護するという事を進化の過程で学びました。しかしながら、私たち祖先もはじめから原始布のような布帛(二次元)を作り上げていたわけではありません。その始まりは、布帛の前段階である紐状(一次元)のものであったと思われます。それも、木や草の細長い蔓や茎あるいは葉等を採取し、何の加工も施さずにそのまま紐として使った事でしょう。そのうち、よりしなやかで強くするために、例えば縄状にする、糸のように撚りをかけるといったことを学んでいったとのだと思われます。

そしてこの紐で、物を縛ったり、束ねたり、吊るしたりしたことでしょう。そして毛皮衣等を縫う糸や釣り糸等に用いていた事は容易に推測できます。又、史実としても縄文前期の出土の中にも縄目を持った土器や骨針などの出土に見られますし、その骨針も直径2mm前後の針穴を持っている物も出土されていますので、かなり細くて強度のある糸が作られていたことが窺えます。そういったことから縄文以前には紐や糸を作る技術が存在していたのではないかと思われます。

そして、紐や糸(一次元)を布帛(二次元)に加工することを長い歴史の中で学ぶわけですが、既に自然界には布帛ではない二次元状の物が存在していました。例えば大きな葉や、樹皮、獣皮、魚皮等です。これらを採取し使っていたのだと思われます。そして、より使いやすく便利なものに出来ないかと考えた結果が、紐や糸(一次元)を布帛(二次元)へと加工させるきっかけとなったのではないでしょうか?

布帛以前にこれらの樹皮や獣皮等を用いていたのではないかと推測できるのは、史実が伝えているというよりも、未開の布帛を作る技術を持たない原住民がこれらの素材をうまく利用しているということからです。(調べるにあたり、山形県米沢市『出羽の織座』原始布・古代織参考館の館長である山村精(まさし)様にお世話になりました。本当に有難うございました。)

【布帛へ 原始布の原点】

原始布の原点は編物から

さて紐や糸(一次元)を布帛(二次元)に加工する技術を習得するわけですが、ひとつの疑問があります。それは織物と編物のどちらが先であったか?ということです。

その確たる証拠はありませんが、

道具と技術 編物の方がはるかに作る道具や技術は簡単である。
出土品 編物の方が古い時代に出土されているものが多い。
土器の圧痕 縄文中期にならないと織物の圧痕が出てこない。

といった事実から編物のほうが早かったのではないかと推測できます。