学校行事の式典の代表格は、毎年3月の卒業式と4月の入学式でしょうか。いずれも学校にとって重要なセレモニーであり、フォーマルな装いがふさわしいTPOであるといえるでしょう。
威儀を正すモーニングコート
最近の傾向として、卒業式や入学式でモーニングコートを着る校長先生が少なくなってしまったのは残念なことです。モーニングコートとは、前裾を斜めに大きくカットした黒無地、シングル前の上着に、黒あるいは明るいグレーのベストと黒×シルバーの縞柄スラックスを組み合わせる昼間の正礼装です。シャツは白無地のレギュラーカラー、ネクタイはシルバーのストライプ柄、靴は黒のキャップトゥ(つま先が一文字の切り替えになった紐靴)を合わせるのが一般的です。何事も簡略化される昨今、服装も例外ではないのが時流とはいえ、やはり学校の長たる立場の方にはモーニングコートで威儀を正していただきたいと思うのですがいかがでしょうか。
先生方は是非ディレクタースーツを
一方の先生方の服装はというと、黒の上下(ブラックスーツ)、いわゆる「略礼服」が多いようです。黒の上下は慶事の服としても弔事の服としても着られるという利便性があるためでしょうか、わが国で広く普及しています。しかし、ハレの席もケの席もこの一着で済ませてしまおうとするのは少々横着というもの。さらに、先生方の服装が揃いも揃って黒の上下に白ネクタイでは、学校の式典なのか誰かの結婚式なのか区別がつかなくなってしまうでしょう。
校長先生には格調高いモーニングコートを着ていただくとして、それに釣り合う先生方の服装として、ディレクターズスーツをご紹介します。耳慣れない名前かもしれませんが、モーニングコートのベストや縞柄スラックスはそのままに、長く伸びた上着のお尻を切り取ったものをイメージしてください。シャツ、ネクタイはモーニングコートのコーディネートに準じます。かつてシティ(ロンドンの金融街)を闊歩した重役(ディレクター)たちが着用したところからこの名があります。ディレクターズスーツは昼間の準礼装です。
セレモニーに対する敬意と晴れがましい気持ちを服装に込めて
「略礼服」では安直すぎる、かといってディレクターズスーツをわざわざ誂えるのもちょっと、というときに知っておくと重宝するのが<略礼装>です。<略礼装>とは、普段着ている濃紺やグレーのビジネススーツをフォーマルウェアとして装うことであり、「略礼服」とはまったく別物とお考えください。
例えば、ごくごくオーソドックスな濃紺無地のスーツがあるとしましょう。このスーツを<略礼装>として着るとき、私ならば、まずシルバーグレーのベスト(単品)を組んでスリーピース仕立てにします。次に、白無地のシャツに濃紺とシルバーのストライプタイを結びます。最後の仕上げとして、スーツの胸に白無地のポケットチーフを挿し、足元を黒の紐靴で固めます。スーツとベスト、シャツ、ネクタイのカラーバランスは<コントラスト>、プレーン/ファンシーは<2プレーン・1ファンシー>です。 式典は晴れがましいセレモニーです。セレモニーに対する敬意と晴れがましい気持ちを服装にも込めて、その場にふさわしい格調高い装いを整えていただきたいと思います。