日本文化から学ぶ人との付き合い方、ものとの付き合い方 ~今大事なものは江戸の暮らしの中にある~
- No.:
- 第8回 服育ラボ定期セミナー
- 日時:
- 2009年3月14日(土)
- メイン:
- 日本文化から学ぶ人との付き合い方、ものとの付き合い方 ~今大事なものは江戸の暮らしの中にある~
- メイン講師:
- デザイナー 西邑桃代
- サブ:
- 簡単!衣服のリメイク ~大好きだったあの服をよみがえらせる方法~
- サブ講師:
- 服育研究会 有吉直美
日本文化から学ぶ人との付き合い方、ものとの付き合い方 ~今大事なものは江戸の暮らしの中にある~講師:デザイナー 西邑桃代
日本文化の特徴
日本文化と一言にいってもその特徴を説明するのはとても難しいものですが、今回、西邑先生には日本文化の特徴を一文字の漢字で分かりやすく説明していただきました。
例えば日本文化を指し示す「和」からは、外国からの文化や宗教を上手く受け入れながら共存していった日本の特徴を伺い知ることができます。
また宮大工の技術が途絶えないよう工夫された伊勢神宮遷宮を例に日本人の「智」を、他国では見ることのできない民衆にまで広く浸透した高度な文化の様として「衆」を、そのままの良さを尊重し大切にしてきた文化として「素」といった漢字をあげながら説明していただきました。
この他にも「場」「間」「然」など、とても日本的でありながら説明するのが難しい事柄も具体例をあげて分かりやすく教えていただき、日本人でありながら気付かなかった日本文化の素晴らしさを改めて知ることができました。
江戸時代はエコ社会?
広く日本文化の特徴を眺めた後は、江戸時代というひとつの時代に焦点をあて、さらに深く私たちの文化についてみていきました。
江戸時代の特徴や良さを外国の人々に分かりやすく説明するキーワードとして「環境/エコ」があげられます。
ゴミがほとんど出なかったといわれている江戸の都は、全てのものが上手く循環していた世界でも稀な素晴らしい都市でした。
例えば箪笥、下駄、桶などほとんどの日用品は全て修理して繰り返し使われましたし、天秤棒を担いだ行商が多かったので販売用の容器などは必要なく家の軒先で必要なものを必要な分だけ購入することができました。また当時貴重だった着物にいたっては1000軒もの古着屋さんが江戸の町で商いをし、大切に着られていたそうです。
この他にも主食である米は藁やぬかから灰まで徹底利用されていたことや、江戸の町が外国と比してとても清潔だった理由として糞尿も大切な資源として活用されていたことを教えていただきました。
またそれだけでなく日本の暑い夏を乗り切るための五感の使い方(風鈴の音、金魚鉢の様子など)や、雪や月明かりといった自然の明かりを上手く使ったお話など、単に効率や機能性を求めるだけではなかった日本文化の奥深さを知ることができました。
日本文化に親しむと見えてくるもの
最後はいくつか日本らしいものをお見せいただきながら、より具体的に日本文化の特徴を見ていきました。
太陽光を遮り大切な文書を現代まで当時のままの状況で伝えてくれた“巻物”や、ノートなどとは違い離れているページを同時に見ることのできる“折り帖”、とても丈夫で雨音や透ける日の光までも楽しむことができる“番傘”など、西洋化された日常生活の中でほとんど見ることがなくなってしまったものの素晴らしさを教えていただきました。
そして今回は特別に三味線もお持ちいただき、演奏とともにその特徴を教えていただきました。三味線は世界でも珍しい分解できる弦楽器で、この分解を可能にしたのが日本の優れた職人技だったのです。
日本文化を知るということは外国の人々へ自国文化を紹介するためだけでなく、現代日本で生きる私たちの生活の中で大切なものを知るためにも重要なことだと改めて感じました。
「温故知新」。まさにこのことばがぴったりとくるメインセミナーでした。
参加者のご感想
- 現代ほど物は豊富ではなかったかもしれないけれど、限られた資源の中で工夫と人の持っている力を全ていかして、合理的かつ機能的で美しい粋な暮らしを江戸の人たちは楽しんでいたんだなぁーと思いました。PARTⅡで登場したものの構造、しくみを知り感心してしまいました。(家庭科教諭)
- 年齢とともに私たちの文化の良さを実感しています。教科や総合学習で日本文化について考えさせるいろいろなヒントをいただきました。漢字一文字からも多くの日本文化の特徴が表現できることに驚きました。(中学校 家庭科教諭)
- 今回も大変興味深いお話を聞くことができ大変よかったです。日本の文化を再確認、再発見することができました。知っているようで知らなかった事も知ることができとてもためになりました。(中学校 家庭科教諭)
講師のご紹介
- 西邑 桃代
1972年女子美術大学インテリアデザイン科卒業(内1年メキシコ留学)の後、本州製紙入社(CIデザイン)。スペインにも在住し豪国企業でホテル関係のエディトリアルデザインを行う。
1985年㈱FACOL(Fashion Color Laboratory)設立。色彩研究、企業のコンサルタント業務、国際交流基金の日本語教材制作、100冊以上の日本文化紹介の英文本の企画・デザインなど、国際交流関係の業務に従事。
2000年女子美術大学創立百周年記念行事で「リサイクルと創作」のグループを立ち上げる。東京都環境学習リーダー講座7期終了。
2001年NPO法人設立。学校の総合学習、環境学習支援、街づくり「らくがき消しペイント」、途上国自立支援事業、江戸事業、異文化交流、科学物質のリスクコミュニケーション等の活動を展開。
2005年法人名を日本の風に改名。日本文化に焦点をあてた展示会、教室、研究会、外国人の日本文化体験などの活動、江戸や日本文化講座の講師で現在に至る。
日本の風ホームページ http://www.nihonnokaze.jp/
簡単!衣服のリメイク ~大好きだったあの服をよみがえらせる方法~講師:講師 服育研究会 有吉直美
服を“楽しく”よみがえらせる
現在の日本において、消費される衣服の約9割はゴミになっています。中にはゴミには出されないまでも捨てるに捨てられないお気に入りだった服などもあるのではないでしょうか?(いわゆるタンス在庫ですね) サブセミナーではその活用法についてご紹介してまいりました。。
リユース(再利用)できる服はいいのですが、そうでない服をもう一度使うとなると少し手を加える必要があります。バッグなどにリメイクしたり裂き織にしたりといろいろな方法がありますが、今回は楽しくよみがえらせる方法として「京こま」を取り上げました。
着物地や綿の紐などを巻き重ね作られた京こまは、京都の伝統工芸品でもあります。
着なくなった服の中で少し厚めの布地を4cm×40cmに裁断し、バイアステープのように折り曲げたものを何枚か用意したら、後はそれをボンドを使いながらぐるぐると芯棒に巻きつけていくだけです。
学校で友達と布を交換しながら作っても楽しいかもしれませんね。
服を“みんなで”よみがえらせる
もう一つは学校のイベントでよみがえらせる方法で、布を重ねた水ろ過装置です。
目の粗い布から細かい布まで何段階か重ねた箱を用意し、「粗→細」の順に汚れた水を通すことで水をある程度きれいにすることができます。(飲料に適するまでにはなりません)
例えば文化祭などで再利用食器を使い、さらにこんな装置を作ったりすれば、エコへの取り組みがとてもわかりやすくなるかもしれませんよね。
参加者のご感想
- 京こまや布ろ過装置等さまざまなアイデアを聞けてよかったです。京こまは一回作ってみたいと思いました。(中学校 家庭科教諭)
- 京こまについて布を使っているということを初めて知りました。家庭部の生徒に布ぞうりを作らせているのですが、次にこまをやってみようと思いました。リサイクル・リメイクについてもう少しくわしく話を聞かせていただけたらと思ったセミナーでした。(中学校 家庭科教諭)