こころを育む衣服 服育

  • 教材ダウンロード
  • 各種応募申込み
  • お問合せ資料請求
  • 検索
  • 教材ダウンロード
  • 各種応募申込み
  • お問合せ資料請求

服育活動レポート

消費者教育としての安全について

消費者教育としての安全について

消費者教育としての安全について

No.:
第21回 服育ラボ定期セミナー
日時:
2018年8月3日(金)14:00-16:00
セミナー:
消費者教育としての安全について ~自分達を“守る力”を育てるために~
講師:
明治大学名誉教授 向殿政男
PDF:

消費者教育としての安全について ~自分達を“守る力”を育てるために~講師:明治大学名誉教授 向殿政男

1.日常生活の中にある製品事故例

日常生活の中であたりまえに使っている電化製品や食品が思わぬ事故の原因となることがあります。
専門家の立場からこれまで多くの製品事故の対応にあたってこられた向殿先生から主な事故例、特に高齢者と幼児の事故例について教えていただきました。
子どもを事故から守るために製品の安全性を高めるのはもちろんですが、それだけですべての安全が確保されるわけではありません。
欧米では当たり前に行われている「安全教育」が日本にはありません。生命や身体に大きな影響を及ぼすような事故はもちろん回避しなければなりませんが、小さな危険は許容しながら子どもの発達段階に応じた経験を積ませ、危険回避能力を養う教育が大切なのです。

labreport21_2

2.衣服と安全

衣服も私たちの安全を守るための役割を担っており、そのためにはいくつか観点があります。
園児帽の日よけ、パーカーのひも、視認性の高い黄色い服などの「形・スタイル・デザイン」、燃えにくい、涼しいなどの「生地・素材・材質・厚さ」、着衣着火の原因ともなる「大きさ」、そして虫よけなど特定の目的に特化した「目的別衣服」です。
何よりも大切なのは消費者が安全の価値を重視することです。「安全」は大前提であり、かっこよさよりも価格よりも大切な価値として認識されなければなりません。

labreport21_3

3.学校における安全

学校における安全への取組については、自分の身を守るための知識や安全の常識を身に付ける「安全教育」と、災害時の安全対策を確立しその実施・訓練等を行う「安全対策」の二つの側面があります。
安全教育に必須の三つの項目として、自分で自分の身を守るための「訓練重視の教育」、安全に関する基礎的な知識を習得する「知識重視の教育」、安全にとって望ましい道徳的態度を身に付ける「理念の教育」があげられます。
製品やものに絶対安全はないと認識することも大切で、例えば包丁は危険なものですが調理をする際に欠かせないものでもあります。そのリスクとベネフィットの両方を知り、危険を予測して正しく使うことができるようにすることが大切なのです。

4.安全学からの視点

絶対安全はというものは存在しません。もちろんこれは製品開発にあたって目指すべき目標ではありますが、設備や機器や劣化しますし、そもそも人間は間違える生き物です。組織やルールにも完全なものはありません。
安全とは「人への危害または損傷の危険性が、許容可能な水準に抑えられている状態」「許容できないリスクが存在しないこと」と国際的には定義されています。
安全学の視点から言うと、メーカーは「安全に作る」、消費者は「安全に使う」、そして行政は「安全を見守る」というようにそれぞれが安全のために為すべき役割があるのです。
消費者も一緒になって安全を作る事が大切です。

labreport21_4

5.安全から安心へ「安全×信頼=安心」

「安心」と感じられる社会のためには、作る人と使う人が信頼し合うことが大切です。
情報の開示や透明性を高めることなどが信頼を生み、その信頼が安全と安心をつなぐものになるのです。

参加者のご感想

具体的な事例やデータも多く、とても分かりやすい内容でした。豊富な情報量での安全というキーワードからのアプローチで、“安全”について深く考えるとてもいい機会になりました。と同時に特に、中学生の方で「安全教育」を意識して、授業の中でしっかりと取り入れていく必要を痛感しました。有難うございました。(中高一貫校家庭科教諭)
高齢者と子どもの両方を比較しながらお話されていたので分かりやすかった。「なるほど!」と感じることが多く、とても勉強になった。安全学という視点からのお話は専門的で初めて学ぶことが多かった。生徒達に伝えて学ばせたいことがたくさんあるので、できることから実践していきたいと思う。(中学校家庭科教諭)
安全について考えるきっかけと、導入の知識を頂きました。教員として生徒に伝えていくために学んでいく必要を感じました。「“安全”を提供するのではなく、“自分自身で守る”という意識を持たせるような安全教育をする」という話がとても印象的でした。(支援学校家庭科教諭)

講師のご紹介

向殿 政男
向殿 政男
明治大学名誉教授

■肩 書

明治大学名誉教授、明治大学顧問、明治大学校友会長
工学博士

■略 歴

1942年生まれ
明治大学工学部電気工学科卒業
明治大学工学研究科電気工学専攻博士課程修了
明治大学工学部電気工学科 専任講師
明治大学工学部電子通信工学科 教授
明治大学理工学情報科学科 教授
明治大学理工学部 学部長
現 明治大学 顧問
現 明治大学 名誉教授
現 明治大学 校友会会長

■経歴

国際ファジィシステム学会副会長
日本ファジィ学会会長
日本信頼性学会会長
電子情報通信学会フェロー
日本知能情報ファジィ学会フェロー
国際ファジィシステム学会フェロー
中央労働災害防止協会顕功賞受賞
安全工学会 北川学術賞受賞
経済産業大臣表彰受賞
厚生労働大臣表彰受賞
内閣総理大臣表彰受賞
厚生労働省社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会長
経済産業省消費審議会製品安全部会長
消費者庁参与
現 日本学術会議連携 会員
現 公益社団法人私立大学情報教育会 会長
現 一般社団法人 セーフティグローバル推進機構 会長

■研究領域

安全学(機械安全、労働安全、製品安全、消費者安全)
情報学(ファジィ理論、人工知能、情報教育)
論理学(多値論理、フェールセーフ論理、ファジィ論理)

■著 書

『ファジイ「あいまい」の科学』岩波書店(1990年)
『ファジイ論理』日刊工業新聞社(1993年)
『ニューロとファジィ』培風館(1994年)
『よくわかるリスクアセスメント』中災防新書014、中央労働災害防止協会(2003年)
『機械安全(安全の国際規格)』日本規格協会(共著 2007年)
『安全学入門―安全の確立から安心へ』研成社(共著 2009年)
『なぜ、製品の事故は起こるのか ―身近な製品の安全を考える(安全学入門)』研成社(共著 2011年)
『機械・設備のリスク低減技術』日本機械工業連合会(共著 2013年)
『日本の安全文化』研成社(共著 2013年)
『入門テキスト 安全学』東洋経済新報社(2016年)