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服育活動レポート

ファッションの裏側にあること ~服を買う前に考えてみませんか~

ファッションの裏側にあること ~服を買う前に考えてみませんか~

ファッションの裏側にあること ~服を買う前に考えてみませんか~

No.:
第20回 服育ラボ定期セミナー
日時:
2017年8月4日(金)13:00-15:30
セミナー:
ファッションの裏側にあること ~服を買う前に考えてみませんか~
講師:
茨城大学 准教授 長田華子
PDF:

第一部/映画上映「The True Cost」

これは衣服に関する物語で、私たちが着る服や衣服をつくる人々、そしてアパレル産業や世界に影響を与える物語だ。これは貪欲さと恐怖、そして権力と貧困の物語でもある。全世界へと広がっている複雑な問題だが、私たちが普段身に付けている服についてのシンプルな物語でもある。
この数十年、服の価格が低下する一方で、人や環境が支払う代償は劇的に上昇してきた。本作は服をめぐる知られざるストーりーに光を当て、
「服に対して本当のコストを支払っているのは誰か?」という問題を提起する、ファッション業界の闇に焦点を当てたこれまでになかったドキュメンタリー映画だ。

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The True Cost HPサイトより

第二部/トークセッション 子ども達に伝えたい服の話 ~エシカルコンシューマーを育てるために~講師:茨城大学 准教授 長田華子

アジア経済論、ジェンダー論を専門にし、バングラデシュ、ダッカ大学への留学中には多くの縫製工場で、女性たちの生の声を聴いてこられた長田先生に、私たちがよりよい衣服との付き合い方をしていくために大切なことについてお話をお伺いしました。

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-世界の縫製業の現状について教えてください。
2013年4月にラナプラザの事故が起こり、バングラデシュの縫製業の問題点について世界中で報道されました。その直後からILOをはじめとする国際機関やバングラデシュ政府はその対策に取り組み始めました。
しかし、バングラデシュが衣服の下請け生産の拠点であるという位置づけは、今も昔も変わりません。問題の構造自体は変わっていないのが現状です。

-広がりつつあるエシカルコンシューマー(倫理的な消費者)について教えてください。
私は、「エシカルコンシューマー」とは、自分の消費に「自覚的」である人のことだと考えます。何よりも自分の消費について関心を持つことが大切だと感じています。
今日では、服を作るということがどれほど大変かを知らない子が多すぎます。服作りの現場を見学するなど、服がどのように作られているのかを知ることが出来れば、少しは、自分が消費しているものにも関心を持つことにつながるのではないでしょうか。

-衣服は輸入比率が非常に高いのですが、どのようにすれば世界(服を作っている国)の問題と自分の衣生活をつなげていくことができるでしょうか?
例えばラナプラザの事故を見つめなおすことから考えることが一つです。
写真などを見せながら「なぜバングラデシュの人たちは亡くならなければならなかったのか」を考えることは、自分の無自覚さへの気付きにつながります。
ラナプラザの事故は、特に欧米では大きく報道され、消費者の関心を集めましたが、日本ではほとんど報道されず、結果として事故について知らない人が沢山います。

-これから私たちは服をどのように選んでいけばよいでしょうか?
まずは、今、市場に溢れている服の値段が安すぎることへの認識が必要です。
その上で品質表示等を確認し、どこでどんな素材を使って作られているのか、またどのように手入れすればよいのか確認するなど、その服との付き合い方を考えながら選ぶことが大切です。
また、国内製であろうと海外製であろうと、衣服の作り手たちはわたしたちの着心地の良さを考えて、一枚一枚丁寧に縫製していることをもっと知ってほしいです。
大人はそのための知識をしっかりと子どもたちに伝えていかなければならないと思います。正しい知識と服への愛着を育てることがエシカルコンシューマーを育てることにつながると思います。

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参加者のご感想

ファストファッションが大きな代償を生んでいる事を理解できてとてもよかったです。授業で消費生活と衣服の両方で授業に取り入れようと思います。同時に、社会科の先生とのコラボもできる内容だと思いました。トークセッションは30分間という時間でしたが、色々なお話が伺えて良かったです。もう少し長く、今現在の色々な情報がお聞きしたかったです。(中学校家庭科教諭)
皆が服の裏側について知るべきだという長田先生のご意見に共感しました。生徒にどう分かりやすく教えたらいいのか、考えさせられた。生徒の反応が薄く、どう教えたらいいのか悩んでいたので、勇気づけられた。二学期の授業で頑張りたい。(中学校家庭科教諭)
映画について、この年になって世の中のことを私自身何にも知らないのだ...と気づかされました。生徒にぜひ考えさせたい。長田先生の熱意が伝わりました。いろいろな授業のプランがうかびました。有難うございました。(高等学校家庭科教諭)

講師のご紹介

長田 華子
長田 華子
茨城大学人文社会科学部 准教授

茨城大学人文社会科学部准教授。専門はアジア経済論、南アジア地域研究、ジェンダー論。1982年生まれ。2012年3月お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科修了(博士:社会科学)。2013年日本学術振興会特別研究員(PD・東京大学社会科学研究所)を経て、2014年4月より現職。2006年4月から1年間ダッカ大学社会科学部女性学・ジェンダー学科に留学、以降バングラデシュの縫製工場で働く女性たちについて研究。主な著書は、『990円のジーンズがつくられるのはなぜ?―ファストファッションの工場で起こっていること』(合同出版、2016年)、『バングラデシュの工業化とジェンダー―日系縫製企業の国際移転』(御茶の水書房、2014年)。