正しい知識で服を守る ~暮らしの中の虫から衣類を守るために~
- No.:
- 第11回 服育ラボ定期セミナー
- 日時:
- 2009年11月14日(土)
- メイン:
- 正しい知識で服を守る ~暮らしの中の虫から衣類を守るために~
- メイン講師:
- 消費生活アドバイザー 林佳苗
- サブ:
- 制服をきれいに気持ちよく ~ハンバー力を高めよう~
- サブ講師:
- 服育研究会 有吉直美
正しい知識で服を守る ~暮らしの中の虫から衣類を守るために~講師:消費生活アドバイザー 林佳苗
家の中にいる虫たち
去年しまっておいたセーターを今年着ようとしたら穴があいていた、なんて経験ありませんか?特に気に入ったセーターの、しかも目立つところが虫食いにあっていたらほんとに悲しいですよね。
今日は「そのセーターがなぜ虫の被害にあってしまったのか」について説明をしていきたいと思います。
私たちの身の回りには多くの虫が存在していますが、家の中も例外ではなく、どんなに掃除をしても虫は必ずいるものです。
ケナガコナダニなどの干ししいたけやそうめんといった貯蔵食品につく虫、シロアリなどの家屋につく虫、ユスリカなどのいろいろなものに混入する虫、ゴキブリなどの衛生的に悪い虫、そして今日ご紹介する衣類につく虫です。
普通虫たちは気温が15度以上の春から夏にかけて活発に活動し、冬の間はじっとしているのですが、機密性の高い現代の住居では季節に関係なく一年中活動していると考えた方がいいかもしれません。
衣類にダメージを与える虫の特徴
虫の被害にあいやすい繊維は基本的には動物性たんぱく質や動物性脂質を含む動物繊維(ウール、シルクなど)ですが、植物繊維(綿、麻など)や化学繊維の中でも再生繊維(レーヨン、キュプラなど)は原料がパルプで、木(植物)を食害する虫がいるので可能性がないわけではありません。
また、皮脂や食べこぼしなどの汚れがついていると虫の餌になり、結果的に動物繊維以外でも虫の被害にあう可能性は高まります。
今日は衣類を餌にして穴をあける虫から代表的な4種類を紹介します。
<イガ>
・1年で2~3回世代交代、冬場は幼虫で越冬。
・成虫は体長約5mm、羽を広げた時約2cm弱。羽は薄い灰褐色で3つの黒い紋がある。
・幼虫は5~6mmで白色。糸を吐いて食べかすや繊維を綴って筒状の巣を作り巣ごと移動する。
<コイガ>
・1年で3~4回世代交代。冬場は幼虫で越冬。
・成虫の大きさはイガとほぼ同じか、少し大きいものもいる。羽は金茶色で斑点はない。
・幼虫もイガとほぼ同じか少し大きめ。糸を吐いてトンネル状の巣を作り、巣は固定されている。
<ヒメカツオブシムシ>
・1年で1世代。
・成虫の大きさは約4.5mmの長楕円形。背中は黒褐色か黒色の短毛でおおわれている。
・幼虫は約9mmの紡鐘形。尾端に数十本の長い毛束がある。
<ヒメマルカツオブシムシ>
・1年で1世代。
・成虫の大きさは約2.5mmの卵円形。背中は白、灰色、褐色のまだらのような模様の鱗片でおおわれている。
・幼虫は約4mm、細長いダルマ型。全身が剛毛で覆われた尾端に長毛の束(槍上毛)がある。
どの虫も食害するのは幼虫の時のみです。成虫(蛾)の口は退化しており食べるということができないのですが、幼虫の時は一週間で自分の体重の2、3倍くらいの餌(繊維)を平気で食べます。
家庭での衣類の防虫方法
これらの虫から大切な衣類を守るために、まずは外部から持ち込まないようにすることが必要です。白い洗濯物やシャツなどにつくことがあるので気をつけましょう。
室内を清潔にし、餌になる食べこぼしの染みなどは残さないようにしましょう。洗濯のり自体も餌になることがあるので、保管の際はのりをかけない方がよいでしょう。
また、アイロンをかけることによって熱で虫やその卵を殺すことができます。
虫は湿気のあるところが好きなので衣替えはお天気のよい日に行い、湿気を溜め込まないようにしましょう。
そして防虫剤や脱酸素剤などを有効利用しましょう。ただし防虫剤の組み合わせによっては化学変化をおこし服に染みを作る原因になってしまいますので気をつけましょう。
防虫剤を入れる時は使用量や使用期限を守り、できれば衣類は引き出しなどの収納容積の8割程度で使うのが有効です。
衣類を保管する際も全部一緒ではなく、(1)とても大切なもの (2)何年かは着たいと思うもの (3)普段着 というふうに分類し、保管方法を変えるとよいでしょう。
今日は衣類害虫についてお話してきましたが彼らも自然界の生態系サイクルの中のピースのひとつです。
人間の都合だけで防虫剤を大量に使って退治するのではなく、それは最小限にして、なるべく「入れない、持ち込まない」工夫で被服管理をすることが大切なのではないかと思います。
参加者のご感想
- 今までの知識をより深いものにすることができました。科学的なことなど、映像で説明してもらってとても良く分かりました。防虫剤の違いについてもよく分かり、扱い方を考えていきたいです。押入れの温度、湿度の管理もしていきたいです。(中学 家庭科教師)
- 忙しい毎日でつい自分の衣服の管理もおろそかになりがちです。大切なセーターを衣替えで穴あきを発見することも何度かあり、勉強に来させていただきました。原因となる虫の話が面白かったです。拡大写真だけでなく、実物も確認でき有難うございました。科学の目で衣類の管理の必要性を納得できました。(中学 庭科教師)
- 実際に虫を見れたのがとても良かったです。防虫について、生徒に指導する際の大切なことがよく分かりました。被服分野は専門ではなかったので本当に役立ちました。(高等学校 家庭科教師)
講師のご紹介
- 林 佳苗
- 消費生活アドバイザー、繊維製品品質管理士、1級衣料管理士
武庫川女子大学家政学部被服学科を卒業。紳士服アパレル((㈱ダーバン)商社(丸紅㈱、丸紅ファッションプラニング㈱)婦人服アパレル(㈱ジオン商事、㈱キング)にて、繊維の染色堅牢度、物性、消費性能試験などの試験を行い品質管理業務や新素材の用途開発・技術アドバイスに携わる。現在は、㈱ビアブルにて、生活環境内で出会う昆虫やダニの検査・試験を行っている。
制服をきれいに気持ちよく ~ハンバー力を高めよう~講師:服育研究会 有吉直美
一番簡単な被服管理「ハンガーにかける」を極めよう
「制服の手入れをしましょう」といっても、面倒くさいのかなかなかできない子が多いかもしれません。
子どもたちの被服管理に関する意識調査を見てみると、確かにブラシをかける、アイロンをかけるといったお手入れを行っているのは1割~2割程度でした。
しかし男女ともに約9割の子どもたちが行っていることもありました。それは「ハンガーにかける」です。
であればその「ハンガーにかける」を何も考えずに行うのではなく、少し意識して行うことで簡単且つ効果的に衣服のお手入れをする事ができるのではないでしょうか。
まずは服にあったハンガーを選ぶことが重要です。服のサイズにあわせた“幅”、そして制服のように肩パットのあるジャケットでは肩にあわせた“厚み”のあるハンガーを選ぶことが型崩れを防ぐ上で重要です。
かける時はしわがつかないようにポケットの中身を出し、ハンガーに肩をあわせてきちんとかけます。ハンガーにかけることで一日の着用で吸収した水分を乾かすこともできます。
基本ができたらハンガーにかけたままできる応用編のお手入れにもチャレンジです。
風通しのよい屋外に干して匂いをとったり、お風呂の蒸気を使ってしわをとったり、ブラシをかけてほこりをとったりすることで、よりきれいに気持ちよく着ることができます。
制服が一番長い時間過ごすのはハンガーにかけられた状態の時です。ぜひこの時間を上手に使い、大切に着て欲しいですね。