こころを育む衣服 服育

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服育コラム

VOL.10 ファッションの変遷

ファッションという言葉が日常的に使われ出したのは、日本では1960年代に入ってからの事ではないかと思われます。ファッション先進国の欧米を見てもそう古い話しではないでしょう。

ミシンの普及とともにはやり(流行)の出現

ファッション(流行)とは“はやり”ですから、衣服を考えるに“はやる”前提として一般の人々に露呈されなければなりません。それには『はやりの衣服』を作り出す生産力が必要ですし、人々には購入するための経済的余力(消費力)も必要です。この生産力と消費力を押し上げた歴史上の大きな転換期は、1760年代にイギリスに始まり1830年代から欧米諸国に波及した産業革命です。この時代に織機(loom)の機械化(Hand loomからPower loomへ)が見られました。そして遅れる事約100年、1900年前後に米国において現在使用されているミシンとほぼ等しい足踏み式のミシンがアイザック・メリット・シンガー(シンガーミシンの創設者)等によって開発され、それが全世界に広まりました。このミシンが普及した1900年前後を中心として、19世紀以前と20世紀以後で女性の装いは和洋東西を問わず大きく変化を見せる事になります。(勿論男性の装いも変化を見せますが。)古い封建社会から近代社会へ、そして農業から工業あるいは商業化社会へと変化を遂げようとしている時代背景がそうさせたのかもしれません。

足を隠し後ろにトレーンを引いていたドレスから、徐々にスカートの丈は短くなり、そして上下セパレートのスーツ形式の装いも出始め徐々に今日風のファッションとなって行きました。美しく装うという王侯貴族をはじめとした上流階級にだけ許された非生産的な喜び(楽しみ)が、一般の人々にまで広まって行ったのがこの時代ではないかと思います。すなわち、これがファッションの大衆化という事でした。

上記のように、19世紀から20世紀にかけて衣服のスタイルが大きく変化致しましたが、次の21世紀に向かって衣服はどのように変化していくのでしょうか?占って見たら面白いと思います。(改めて述べさせて頂きます。)

ファッションの同質化

さて、今日ファッションと言う言葉が蔓延しています。しかし、『これが今流行っている。』あるいは『今のファッションはこれだ。』と言いはじめた時点で既にファッションの同質化が始まっているのです。そして同質化した途端に魅力は半減し風化の道をたどります。ですから、『ファッションなんて所詮際物である。』という認識が必要ではないかと思います。

つまり、同質性と新奇性(新規ではない)の際、このギリギリの微妙な境目にファッションの美意識があるという事です。そのような目で若い人達を見るにつけ『ファッションだ、個性だ、自由だ、創造性の発揮だ。』と唱えながら、結局のところ同質化の方向に安住してしまうという今の若者達のファッションに憂いを抱くのは私だけでしょうか?