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服育コラム

VOL.7 【原始布】原始布の種類

原始布の種類】

原始布ということばが、昔からあったわけではありません。
原始布は綿織物が作られる前に私たち祖先が作っていた織物の総称ですから、少なくともそういった織物を注目し出したときから生まれたことばです。これまでは奈良時代以前の祖先が作った原始布の原点である紐や布を見てきましたので、次に一般的にいわれている原始布を見ていくことに致します。

三大原始布

(1)しな布 しなの木の樹皮を繊維として織り上げます。(主に新潟、東北地方)
(2)芭蕉布 芭蕉布 糸芭蕉の幹(じつは葉柄)の部分から作ります。(沖縄)
(3)葛布 山に自生する蔓性植物くずの繊維から織り上げます。(静岡)

上記が、日本の三大原始布といわれています。

(1)しな布

原料 しな布の原料であるしなの木は、しなの木科の落葉樹で菩提樹の種類です日本海側や東北地方の山野に多く自生しており、地方によりによりマダ、マンダ、モウダなどと呼ばれています。
変遷等 歴史は古く、日本各地で自家用として織られていました。
特に、日本海側、東北地方で多く織られていましたが、明治維新後、近代化が進むにつれて姿を消し、現在では2、3か所の山里でひっそりと織り続けられているに過ぎません。樹皮の糸であるしな糸は動力機械で織ることができないので、居座機を使い手織をしています。そして、織糸が樹皮繊維であることから歴史的に北方系の織物であり、アイヌ文化圏(オヒョウからアトゥシを織る=後述)に属する織物ではないかともいわれています。
特長 染料による染色はせず、科の木本来の色のまま織りあげる場合が多いですから、黄褐色をしています。かたくゴワゴワしていますが、しなやかで強くさらりとした感じがあります。

(2)芭蕉布

原料 芭蕉(ばしょう)というと馴染みがないかも知れませんが、バナナの木と同じ仲間です。バナナの木は実芭蕉(みばしょう)といわれており、芭蕉布の原料とは糸芭蕉(いとばしょう)です。糸芭蕉は高さが約2メートルで、世界一大きな草といわれています。
変遷等 糸芭蕉が繁茂していたため、奄美諸島から与那国島にかけて昔から芭蕉布がさかんに織られ、身分の上下なく晴着や普段着として着用されていました。芭蕉布の起源は明らかではありませんが、1373年頃の明朝への入貢品目録の中に、芭蕉布のことと思われる「生熟夏布」の名があります。芭蕉布は沖縄の代表的な織物でありながらも、ほとんど県外に知られることなく生産され続けた織物である。現在の芭蕉布は戦後、平良敏子さんにより復興されたものである。昭和四九年には国の重用無形文化財に指定された。
特長 麻より繊維が軽く、かたく張りがあり、さらりとした風合いで通気性がよく模様はほとんどが絣柄となっています。

(3)葛布

原料 葛の蔓から採った繊維で織った布で「かっぷ」とも呼ばれています。葛はマメ科蔓性の多年草で山野の至るところに生えています。藤と同様に古くから利用された繊維の一つです。
変遷等 延喜年間(901~923年)の頃、朝廷で「けまり」をする際の奴袴として用いられていました。 又、葛布には葛の繊維だけで織ったものと、経糸に絹や木綿を用いたものの2種類があり、前者は佐賀県唐津市佐志や鹿児島県甑島等の地方で、仕事着、敷物や漁網に、後者は鎌倉時代から江戸時代にかけては葛袴と呼ばれて夏袴や裃として用いられていました。染め柄には無地、縞物、紺染、茶染等がありました。
特長 葛糸は弾力性があまりなく、剛直でもあります。靱皮より取り出した繊維は、良く洗いきれなかった皮の部分が残って、所所黒い斑を現しています。太さが均一ではなく自然の風合いが残っています。全く撚りをかけないテープ状であるため、繊維の平面に光りが当たって反射する事により不思議な光沢が生まれます。